睡眠時無呼吸症候群(SAS: Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中に繰り返し呼吸が止まる(無呼吸)、または浅くなる(低呼吸)疾患です。日本では推定300〜500万人の患者がいるとされ、その多くが未診断のまま放置されています。
SASの大部分は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と呼ばれるタイプで、睡眠中に舌や軟口蓋が気道を塞ぐことで起こります。肥満だけでなく、顎が小さい(小顎症)、舌が大きい、扁桃肥大など、口腔・顎顔面の形態が原因となることも多く、歯科的なアプローチが有効です。
SASは単なる「いびき」の問題ではありません。睡眠中の低酸素状態が繰り返されることで、全身にさまざまな悪影響を及ぼします。
高血圧、不整脈、心筋梗塞、脳卒中のリスクが2〜4倍に増加。SAS患者の約50%が高血圧を合併しています。
睡眠中の低酸素状態がインスリン抵抗性を高め、2型糖尿病の発症・悪化リスクを増大させます。
交通事故のリスクが健常者の2〜7倍に。居眠り運転による重大事故の原因として社会問題になっています。
慢性的な睡眠不足により、記憶力・判断力・集中力が低下。認知症のリスク因子としても注目されています。
睡眠の質の低下は、うつ病や不安障害のリスクを高めます。QOL(生活の質)の著しい低下を招きます。
重症SASを未治療のまま放置すると、8年後の死亡率が約37%に達するという報告があります。
口腔内装置(OA: Oral Appliance)は、睡眠中に装着するマウスピース型の治療装置です。下顎を前方に移動させることで気道を広げ、いびきや無呼吸を改善します。CPAP(持続陽圧呼吸療法)に比べて装着が簡便で、旅行や出張時にも携帯しやすいのが特徴です。
当院では、患者様の歯型に合わせたオーダーメイドの口腔内装置を作製します。精密な咬合調整により、装着感の良い装置を提供し、継続的な使用をサポートします。
| 項目 | 口腔内装置(OA) | CPAP |
|---|---|---|
| 装着感 | 小型で違和感が少ない | マスク装着が必要 |
| 携帯性 | コンパクトで持ち運びやすい | 機器が大きく電源が必要 |
| 適応 | 軽症〜中等症のSAS | 中等症〜重症のSAS |
| 効果 | AHI 50%以上の改善 | AHIの大幅な改善 |
| 副作用 | 顎関節の違和感(一時的) | 鼻・口の乾燥、圧迫感 |
| 保険適用 | 医科の紹介状があれば適用 | 適用 |
| 継続率 | 高い(装着が簡便) | やや低い(装着の煩わしさ) |
「たかがいびき」と思っていませんか?いびきは睡眠時無呼吸症候群の重要なサインです。いびきの原因は、睡眠中に舌根部や軟口蓋が気道を狭めることにあり、これは歯科的な治療で改善できる場合が多くあります。
当院のいびき外来では、口腔内の診査に加え、気道の評価を行い、いびきの原因を特定します。軽症の場合は口腔内装置のみで改善が見込め、重症の場合は医科と連携してCPAP療法との併用も検討します。
下顎が小さい、または後方に位置していると、舌が気道を塞ぎやすくなります。口腔内装置で下顎を前方に誘導することで気道を確保します。
舌が大きい、または低い位置にあると気道が狭くなります。MFT(口腔筋機能療法)で舌の位置を改善するアプローチも有効です。
首周りの脂肪沈着により気道が圧迫されます。口腔内装置による気道拡大に加え、生活習慣の改善指導も行います。
慢性的な鼻づまりにより口呼吸になると、いびきが悪化します。必要に応じて耳鼻咽喉科と連携して治療を進めます。
まず内科・呼吸器内科・耳鼻咽喉科等でSASの検査(簡易検査またはPSG検査)を受けていただきます。SASと診断され、口腔内装置による治療が適応と判断された場合、医科からの紹介状をお持ちください。
紹介状をもとに、口腔内の状態を詳しく診査します。歯周病や虫歯の有無、歯の本数、顎関節の状態などを確認し、口腔内装置の適応を判断します。
上下の歯型を精密に採取し、下顎の前方移動量を決定します。患者様の症状と口腔内の状態に合わせて、最適な装置設計を行います。
完成した口腔内装置を装着し、フィット感や咬合を細かく調整します。装着方法や取り扱いについて丁寧にご説明します。
装着後1〜2週間で再来院いただき、装着感の確認と微調整を行います。その後、医科で再検査を受けていただき、治療効果を客観的に評価します。
3〜6ヶ月ごとに装置の状態確認と口腔内のチェックを行います。装置の劣化や咬合の変化に対応し、長期的な治療効果を維持します。
口腔内装置(OA)の作製は、以下の条件を満たす場合に健康保険が適用されます。
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 口腔内装置(保険適用・3割負担) | 約10,000〜15,000円 |
| 初診料・検査料 | 約3,000〜5,000円 |
| 調整・メンテナンス(1回) | 約1,000〜2,000円 |
※ 紹介状がない場合や、いびき改善のみを目的とする場合は自費診療となります。詳しくはお問い合わせください。
はい、いびきでお悩みの方もお気軽にご相談ください。ただし、保険適用で口腔内装置を作製する場合は、医科でのSAS診断と紹介状が必要です。まずは医科の受診をお勧めする場合もあります。
はい、CPAP不耐容の方に口腔内装置が処方されるケースは多くあります。主治医にご相談の上、紹介状をお持ちいただければ対応いたします。
最初の1〜2週間は違和感を感じることがありますが、ほとんどの方が慣れます。当院では装着感を重視した精密な調整を行い、快適にお使いいただけるよう努めています。
口腔内装置は歯に固定するため、一定数の歯が必要です。歯の本数や状態によっては適応外となる場合があります。初診時に詳しく診査いたします。
一般的に2〜3年程度です。定期的なメンテナンスで状態を確認し、必要に応じて新しい装置を作製します。